腕や顔にほくろがあるように、実は口の中、特に舌にもほくろができることがあります。「舌にほくろなんて聞いたことがない」と思われるかもしれませんが、医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれ、皮膚にできるものと同じメカニズムで発生します。メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)が局所的に集まり、活性化することで、黒や茶色の小さな斑点として現れるのです。舌にほくろができる原因は、大きく分けて二つあります。一つは先天的な要因、つまり生まれつきの体質や遺伝によるものです。子供の頃からある場合や、成長とともに自然と現れてくる場合はこのタイプが多く、基本的には良性のもので健康への害はありません。もう一つは後天的な要因で、慢性的な刺激による色素沈着です。例えば、喫煙習慣がある人は、タバコの熱や有害物質の刺激によってメラノサイトが活性化し、舌や歯茎に黒いシミ(メラニン色素沈着症)ができやすくなります。これを「スモーカーズメラノーシス」と呼ぶこともあります。また、特定の薬剤(抗悪性腫瘍薬や抗マラリア薬など)の副作用として、口腔内に色素沈着が現れることも知られています。多くの舌のほくろは良性であり、放置していても問題ありません。しかし、ここで最も重要なのは、その黒い点が「ただのほくろ」なのか、それとも「悪性黒色腫(メラノーマ)」という皮膚がんの一種なのかを見極めることです。口の中にできるメラノーマは極めて稀な病気ですが、進行が早く転移しやすいため、決して見逃してはならない疾患です。良性のほくろと悪性の病変を見分けるためには、いくつかのチェックポイントがあります。まず「形と境界」です。良性のほくろは通常、きれいな円形や楕円形で、周囲との境界線がはっきりとしています。一方、悪性の場合は形がいびつで左右非対称であり、境界がギザギザして滲んだように見えます。次に「色」です。良性は均一な黒や茶色ですが、悪性は色ムラがあり、濃い部分と薄い部分が混在していたり、一部が白っぽく抜けていたりします。そして「変化のスピード」が決定的な差となります。良性のほくろは何年も大きさが変わりませんが、悪性のものは数ヶ月単位で急激に大きくなったり、盛り上がってきたり、出血や痛みを伴うようになったりします。もし、大人になってから急に舌に黒い点が現れ、それが徐々に大きくなっていると感じたら、自己判断で「ほくろだろう」と片付けるのは危険です。また、舌の縁や裏側など、普段刺激を受けにくい場所にできたシミも注意が必要です。歯科医院や口腔外科では、ダーモスコピーという拡大鏡のような器具を使って詳しく観察したり、必要であれば組織の一部を採取して病理検査を行ったりして診断を確定させることができます。「ただのシミ」だと安心するためにも、違和感を覚える黒い点を見つけたら、早めに専門家のチェックを受けることを強くお勧めします。
ほくろが舌にできる原因と危険なシミの違い