ブリッジ治療は、外科手術も不要で違和感も少なく、非常に優れた欠損補綴の手段ですが、物理的な宿命とも言える大きな弱点を抱えています。それは「力の負担」の問題です。本来であれば3本の足で支えるべき体重を、2本の足で支えることになったらどうなるでしょうか。残された2本の足には、常に過剰な負荷がかかり続け、いずれ疲労骨折や関節痛を起こすでしょう。これと全く同じことが、口の中で起きています。ブリッジの土台となった歯(支台歯)には、自分自身の噛む力に加えて、失われた歯にかかるはずだった荷重までがのしかかるのです。この過剰な負担が引き起こす痛みは、虫歯の痛みとは異なる独特のサインを発します。負担過重(オーバーロード)による痛みの典型的な症状は、「噛んだ時だけ痛い」「朝起きると歯が浮いた感じがする」「疲れた時にうずく」といったものです。これは、歯を支えている骨と歯の間にある「歯根膜(しこんまく)」というクッション状の組織が、度重なる衝撃によって炎症を起こしている状態(歯根膜炎)です。初期の段階では、数日安静にしていれば治まることもありますが、原因である過剰な力が取り除かれない限り、炎症は慢性化し、徐々に歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしていきます。骨が溶けると歯はグラグラと揺れ始め、さらに揺れることでダメージが増幅するという悪循環に陥ります。特にリスクが高いのが、奥歯のブリッジです。奥歯にかかる噛む力は自身の体重ほどもあると言われており、食事だけでなく、無意識の食いしばりや歯ぎしり(ブラキシズム)によって、土台の歯には凄まじい破壊力が加わります。この力に耐えきれなくなった時、土台の歯に起こる悲劇が「歯根破折(しこんはせつ)」、つまり歯の根っこが割れてしまうことです。神経のない歯は枯れ木のように脆くなっているため、特に割れやすい傾向にあります。一度根っこが縦に割れてしまうと、そこから細菌が入り込んで骨を溶かし、深い歯周ポケットを形成します。抜歯以外の治療法はほとんど残されていません。また、ブリッジの設計自体に無理がある場合も痛みの原因となります。例えば、2本連続して欠損している場所を、両隣の2本だけで支えるような長いブリッジ(ロングスパンブリッジ)の場合、真ん中にかかるたわみの力(屈曲圧)が強くなり、土台の歯を揺さぶるような力が働きます。これは釘抜きで釘を抜くような作用となり、土台の歯を急速に弱らせてしまいます。歯科医師がインプラントや入れ歯を勧めるケースがあるのは、これ以上ブリッジで繋げると、残っている健康な歯まで共倒れになるリスクが高いと判断しているからです。もし、ブリッジの土台の歯が痛むようになったら、それは「もう支えきれない」という歯からの悲鳴です。この段階での対処法としては、まずは噛み合わせの調整を行い、ブリッジにかかる力を逃がしてあげることが第一です。