ドライソケットになりやすい人の特徴として、年齢や基礎疾患(持病)の有無も見逃せないポイントです。特に高齢の方や、糖尿病などの全身疾患をお持ちの方は、健康な若年層に比べて抜歯後のトラブルに見舞われるリスクが高くなる傾向にあります。これは単純に体力がないからという理由だけではなく、体の持つ「治癒能力」や「免疫機能」そのものが低下していることに起因します。糖尿病は、ドライソケットを含む抜歯後の感染症リスクを著しく高める代表的な病気です。高血糖状態が続くと、血管がダメージを受けて血流が悪くなり、末梢組織まで十分な酸素や栄養が届きにくくなります。抜歯窩の治癒には豊富な血流が不可欠ですが、糖尿病患者の方の場合、この供給ラインが細くなっているため、血餅ができにくかったり、できたとしても傷の修復スピードが遅かったりします。また、白血球の機能が低下することで細菌に対する抵抗力(免疫力)も落ちているため、傷口から侵入した細菌が繁殖しやすく、そこから炎症が広がって血餅が溶解してしまうケースも少なくありません。血糖コントロールが不良な状態での抜歯は、ドライソケットだけでなく重篤な骨髄炎などを引き起こす可能性もあるため、歯科医師と内科医の連携が必須となります。また、骨粗鬆症の治療薬(ビスホスホネート製剤など)を服用している方も注意が必要です。これらの薬は骨の代謝を抑制する作用があるため、抜歯後の骨の治癒が妨げられ、最悪の場合「顎骨壊死(がっこつえし)」という非常に深刻な状態(ドライソケットのさらに重い状態のようなもの)に陥ることがあります。これは単なる治癒不全とはレベルが異なり、専門的な治療が必要となる重大な副作用です。そのため、服用中の方は必ず歯科医師に申告し、場合によっては休薬期間を設けるなどの対策が必要になります。高齢者の場合、特定の病気がなくても、加齢による生理的な変化でリスクが高まります。年齢とともに顎の骨は硬くなり(硬化)、血管の数は減少します。新陳代謝も低下するため、若い頃なら数日で塞がっていた傷が、1週間経っても塞がらないということが起こり得ます。組織の再生能力が落ちているため、一度ドライソケットになってしまうと、そこからのリカバリーにも時間がかかり、長期間痛みに苦しむことになりかねません。もしあなたやご家族が高齢であったり、糖尿病などの持病を持っていたりする場合は、「たかが抜歯」と侮らず、手術後のケアには細心の注意を払う必要があります。栄養バランスの取れた柔らかい食事を摂る、十分に睡眠を取る、処方された抗生物質は飲み切るなど、基本的なことを徹底してください。また、免疫力が下がっている自覚がある場合は、抜歯の日程を体調の良い時に合わせる、感染予防のために術前から口腔ケアを念入りに行うなどの「事前準備」も有効です。持病があるからといって抜歯ができないわけではありませんが、リスクが高いことを理解し、医師と二人三脚で慎重に進めることがトラブル回避の鍵となります。
糖尿病などの持病が抜歯後の治癒に与える影響