下唇の内側に白いものができて痛むと、多くの人はすぐに「口内炎だ」と自己判断し、市販薬で対処しようとします。確かに、そのほとんどは心配のないアフタ性口内炎ですが、中には口内炎とよく似た症状を示す、別の病気が隠れている可能性もゼロではありません。いつもの口内炎とは少し違う、と感じたら、注意深く観察し、必要であれば専門医の診察を受けることが重要です。口内炎と間違えやすい病気の一つに、「口唇ヘルペス」があります。これは、単純ヘルペスウイルスへの感染が原因で起こり、主に唇の周りや口角にできますが、唇の内側の粘膜に現れることもあります。口内炎との大きな違いは、初期症状として、まず小さな水ぶくれ(水疱)が複数個まとまってできる点です。この水ぶくれが破れると、びらんや潰瘍になり、見た目が口内炎と似てきますが、ピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みを伴うのが特徴です。一度感染するとウイルスは体内に潜伏し、疲れやストレスで免疫力が落ちた時に再発を繰り返します。次に、下唇にできやすいものとして「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」があります。これは、唇の内側にある小さな唾液腺(小唾液腺)の管が、誤って噛むなどの原因で詰まったり傷ついたりして、唾液がうまく排出されずに粘膜の下に溜まって、袋状の嚢胞を形成するものです。直径数ミリから1センチ程度の、半透明でぷっくりとしたドーム状の腫れとして現れます。通常、痛みはありませんが、大きくなったり、潰れてはまた腫れるということを繰り返したりします。そして、最も注意しなければならないのが「口腔癌」、特に「口唇癌」や「舌癌」の可能性です。非常に稀ではありますが、初期の口腔癌が、治りにくい口内炎のような見た目で現れることがあります。通常の口内炎との見分け方として、重要なサインがいくつかあります。「2週間以上たっても全く治る気配がない、あるいは大きくなっている」「病変の境界が不明瞭で、形がいびつである」「触れると硬いしこりがある」「表面がただれているだけでなく、デコボコしている」「簡単に出血する」といった特徴です。これらの危険なサインに一つでも当てはまる場合は、自己判断は絶対にせず、速やかに口腔外科や耳鼻咽喉科を受診してください。
その下唇のできもの、本当に口内炎?