舌の下にできる口内炎の原因を探る時、ビタミン不足やストレスといった内面的な要因ばかりに目を向けがちですが、実はもっと単純で物理的な原因が隠れていることが多々あります。それは「歯」です。特に下の歯の内側(舌側)の形状や状態が、舌の裏側の粘膜を傷つけ、慢性的な口内炎を引き起こしているケースは非常に多いのです。これは「カタル性口内炎」や「褥瘡性(じょくそうせい)潰瘍」と呼ばれ、原因となる物理刺激を取り除かない限り、何度でも再発し、治らないのが特徴です。鏡を見て、自分の下の前歯や奥歯の内側をチェックしてみてください。歯並びが悪く、一本だけ内側に飛び出している歯はありませんか? あるいは、長年放置した虫歯で歯が欠けて尖っていたり、金属の詰め物の縁がギザギザになっていたりしませんか? 舌の下の粘膜は非常に薄く柔らかいため、こうした硬く鋭利な部分に、会話や食事のたびに接触し続けることで、靴擦れのように皮が剥け、潰瘍化してしまいます。本人は「いつもの歯並びだから」と気にしていないことが多いのですが、加齢によって舌の筋肉が衰えて下がってきたり、ストレスで食いしばる癖がついたりすることで、以前は平気だった歯の接触が、ある時期から突然「攻撃」へと変わることがあるのです。また、意外な盲点となるのが「歯石」です。下の前歯の裏側は、唾液腺の出口に近く、口の中で最も歯石が溜まりやすい場所です。長期間クリーニングをしていないと、歯の裏側にコンクリートのように硬く、表面がザラザラした歯石が分厚く付着します。このザラザラした歯石の表面に、柔らかい舌の裏側が常に擦り付けられることになるため、ヤスリがけされているような状態になり、炎症を起こします。この場合、口内炎の薬を塗っても治りません。原因である歯石を除去し、歯の表面をツルツルに研磨しない限り、舌への攻撃は終わらないのです。さらに、入れ歯(義歯)を使用している方も注意が必要です。入れ歯の縁が長すぎて舌の下の粘膜に食い込んでいたり、入れ歯の内面が合わずにガタついて動いたりすると、その機械的な刺激で大きな潰瘍ができます。これは非常に痛みが強く、食事も困難になります。入れ歯安定剤などでごまかそうとせず、歯科医院で入れ歯の縁を削って調整してもらう必要があります。物理的な刺激による口内炎の特徴は、「原因となる歯や入れ歯の場所に一致して潰瘍ができている」という点です。舌を動かした時に、痛む場所がどの歯に当たっているかを確認してみてください。もし尖った歯や被せ物に当たっているなら、治療法はシンプルです。歯科医院に行って「ここの歯が舌に当たって痛い」と伝えれば、ほんの少し歯の角を削って丸めたり、被せ物を研磨したりするだけで、嘘のように痛みが消え、口内炎も数日で治癒します。「自分の歯が凶器になっている」とは考えにくいものですが、デリケートな舌の下にとっては、わずかな角張りも大敵です。薬を塗っても治らない口内炎があるなら、一度指で歯の裏側を触ってみてください。