ブリッジ治療において、土台となる歯の神経を残すことは、歯の寿命を延ばす上で非常に理想的な選択です。神経(歯髄)には血管も通っており、歯に栄養や水分を供給して弾力性を保つ役割があるからです。しかし、神経を残してブリッジを入れた後、数ヶ月あるいは数年経ってから、その歯がズキズキと痛み出すことがあります。これは、土台の歯の中で神経が炎症を起こしている(歯髄炎)、あるいは神経が死んで腐ってしまっている(歯髄壊死)可能性を示す緊急事態のサインです。なぜ治療から時間が経って痛み出すのでしょうか。ブリッジを装着する際、歯を平行にするために健康な歯質を削りますが、この時の切削熱や振動、あるいは装着後の噛み合わせの負担などが、神経にとってじわじわとダメージとして蓄積されることがあります。若い健康な神経であれば回復することもありますが、ダメージが許容量を超えると、神経はゆっくりと弱っていき、最終的に壊死してしまいます。神経が死んでいく過程で激しい痛みを伴うこともあれば、いつの間にか死んでしまい、腐敗してガスが発生することで内圧が高まり、ある日突然爆発的な痛みに襲われることもあります。特に特徴的なのが「お風呂に入ったり、布団に入って体が温まったりするとズキズキ痛む」という症状です。これは急性化膿性歯髄炎などの症状で、血行が良くなることで患部の内圧が上がり、神経を圧迫するために起こります。また、「冷たいものは大丈夫だが、熱いものがしみて痛みが長引く」というのも、神経がかなり弱っている、あるいは死にかけている危険な兆候です。ここまで来ると、自然治癒することはまずありません。痛み止めも効きにくい状態になり、夜も眠れないほどの激痛に見舞われることがあります。このような場合、残念ながらブリッジの上から穴を開けて、中の神経を取り除く処置(根管治療)が必要になります。「せっかく高い費用をかけてセラミックのブリッジを入れたのに」と悔やまれる方も多いですが、痛みの元凶である感染した神経を取り除かない限り、痛みは治まらず、やがては根の先に膿の袋を作り、抜歯に至ってしまいます。ブリッジを完全に外してしまうと再製作の費用がかさむため、裏側や噛み合わせの面から慎重に穴を開けて治療を行うことが一般的です。神経を残した判断自体は決して間違いではありません。しかし、ブリッジの土台という過酷な環境下では、神経が耐えきれなくなるリスクが常に隣り合わせであることも事実です。もし、神経のある土台の歯に違和感を覚えたら、激痛になる前に歯科医院を受診してください。初期段階であれば、噛み合わせの調整や消炎処置で神経を保存できる可能性が残されているかもしれません。しかし、ズキズキとした脈打つ痛みが出始めたら、それは神経からの「もう限界だ」という最期のメッセージなのです。