患者さんから「ブリッジは一生持ちますか?」と聞かれることがありますが、残念ながら答えは「NO」です。人工物である以上、ブリッジには必ず寿命があります。一般的に、保険適用のブリッジの平均寿命は7〜8年程度と言われています。もちろん、適切なメンテナンスを行えば10年、20年と使い続けられることもありますが、逆にケアを怠れば数年でダメになることもあります。では、具体的にどのような状態になったら、そのブリッジは寿命を迎え、撤去や再治療を検討すべき「潮時」なのでしょうか。一つの明確なサインは、「セメントの溶解による脱離」です。ブリッジは接着剤で固定されていますが、長年の使用で唾液によってセメントが溶け出し、接着力が弱まります。片方の土台だけ外れてしまい、もう片方だけで繋がっている状態になると、噛むたびにブリッジが動き、外れていない方の歯に強烈なテコの力がかかります。これを放置すると、繋がっている方の歯までダメにしてしまうため、片方が外れた感覚があったり、独特の臭いや味がしたりした時点で、即座に撤去して再接着、あるいは作り直しをする必要があります。次に、「土台の歯のトラブル」です。これがブリッジ撤去の理由として最も多く、かつ深刻です。土台の歯が虫歯になって痛みが出たり、歯周病でグラグラしてきたりした場合、ブリッジを一度切断して外さなければ治療ができないことがほとんどです。特に、土台の歯が歯根破折(根っこが割れる)を起こしている場合は、もはやその歯を保存することは不可能であり、抜歯となります。こうなると、設計を根本から見直す必要があり、さらに長いブリッジにするか、入れ歯やインプラントに移行するかの選択を迫られます。また、「歯茎の変化による審美障害や清掃不良」も潮時の一つです。加齢や歯周病によって歯茎が下がると、ブリッジの縁と歯茎の間に隙間ができ、黒いラインが見えてきたり、食べ物が詰まりやすくなったりします。見た目の問題だけでなく、そこから新たな虫歯が発生するリスクが高まるため、今の歯茎の状態に合わせた新しいブリッジに作り変えることが推奨されます。歯科医師として強調したいのは、「痛みが出てからでは遅いことが多い」という事実です。ブリッジの下で進行するトラブルは、限界まで無症状であることがよくあります。だからこそ、痛みがなくても定期検診でレントゲンを撮り、セメントの状態や骨の状態を確認することが重要なのです。もし、担当医から「そろそろこのブリッジは限界かもしれませんね」と言われたら、それは脅しではなく、土台の歯を守るための温情あるアドバイスです。ブリッジの撤去は、決して敗北ではありません。口の中の環境は年齢と共に変化します。その時々の状況に合わせて、最適な装置にアップデートしていくことが、結果として残りの歯を長く守ることに繋がります。「まだ使えるからもったいない」と粘ることで、取り返しのつかないダメージを負う前に、プロの判断を信じて、適切なタイミングで次のステップへと進む勇気を持ってください。それが、生涯自分の口で美味しく食事をするための秘訣です。