歯並びは、遺伝や骨格だけで決まるものではありません。私たちが毎日、無意識のうちに行っている、ほんの些細な「癖」が、時間をかけて歯に力を加え続け、歯並びを少しずつ悪化させていることが少なくありません。まるで、岩に滴り落ちる水滴が、長い年月をかけて岩を削るように、日常の小さな癖が、あなたの歯並びを歪ませているのです。最も代表的な悪習慣が、「頬杖」です。テレビを見ている時や、デスクワーク中に、片方の手で頬や顎を支える癖はありませんか。この時、顎には持続的な圧力がかかり、それが歯列全体に伝わります。特に、成長期のお子さんの場合は、顎の骨の成長を歪ませ、顔の非対称や、噛み合わせのズレ(交叉咬合など)を引き起こす原因となります。大人であっても、歯並びを内側に倒したり、顎関節に負担をかけたりするリスクがあります。また、「うつ伏せ寝」や「横向き寝」も、長時間にわたって顔の片側に圧力をかけることになるため、歯並びや顎の骨格に影響を与える可能性があります。常に同じ方向で寝る癖がある方は、注意が必要です。唇に関する癖も、歯並びに大きく影響します。「下唇を噛む癖」は、上の前歯を前方に押し出し、下の前歯を内側に倒すため、「出っ歯(上顎前突)」の原因となります。逆に、「上唇を噛む癖」は、下の顎が前に出た「受け口(反対咬合)」を助長することがあります。指しゃぶりも、同様のメカニズムで開咬や出っ歯を引き起こす、代表的な悪習癖です。さらに、「片側だけで噛む癖(偏咀嚼)」も、噛み合わせのバランスを崩す大きな原因です。虫歯や、歯がない部分があるために、無意識のうちに片側だけで食事をしていると、使っている側の筋肉ばかりが発達し、顔の歪みにつながります。また、使われていない側の歯は、汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。これらの癖は、多くの場合、無意識のうちに行われているため、自分ではなかなか気づきにくいものです。しかし、もし自分の歯並びの乱れに心当たりがあるなら、一度、日常生活の中での自分の癖を意識的に観察してみてはいかがでしょうか。その小さな気づきが、歯並びのさらなる悪化を防ぐ第一歩となるかもしれません。
その癖が歯並びを悪化させているかも