死ぬまでに一度は訪れたい世界の歯医者16ヶ所

2026年3月
  • 更年期の私を襲った原因不明の舌の痛み

    生活

    50歳を迎えた頃のことでした。ある日、夕食の準備をして味見をした瞬間、舌の先がピリッと痺れるような感覚に襲われました。「熱いもので火傷したかな?」と思いましたが、翌日になっても、その翌日になっても、その不快なピリピリ感は消えません。鏡で舌を見ても、なんとなく先の方が赤いような気はしますが、大きな口内炎ができているわけでもありません。しかし、痛みは日増しに強くなり、まるで唐辛子を食べた直後のようなヒリヒリ感が一日中続くようになりました。不安になった私は、近所の歯科医院を受診しました。先生は丁寧に診てくれましたが、「虫歯もないし、舌も綺麗な状態ですよ。少し荒れているくらいかな」と言い、うがい薬を出してくれました。しかし、症状は一向に良くなりません。それどころか、痛みの範囲は舌の縁や唇にまで広がり、夜布団に入ってからも口の中が気になって眠れない日々が続きました。何より辛かったのは、「痛い」と言っても見た目に変化がないため、家族にも理解してもらえないことでした。「気にしすぎじゃない?」という夫の言葉に、孤独感とストレスは募るばかりでした。色々な病院を回り、最終的に大学病院の口腔外科で下された診断は「舌痛症(ぜっつうしょう)」でした。先生は優しく説明してくれました。「更年期の女性にはとても多い症状なんですよ。ホルモンバランスの変化で粘膜が敏感になったり、自律神経の乱れで痛みの感覚が過敏になったりすることが原因です。決して気のせいではありません」。その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸が切れ、診察室で涙がこぼれました。原因不明の病気ではなく、更年期という体の変化の一部だと分かっただけで、救われた気持ちになったのです。先生によると、閉経前後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少は、皮膚や粘膜の乾燥を引き起こし、保護機能を低下させるそうです。さらに、子育ての終了や親の介護など、人生のストレスが重なりやすい時期でもあり、それが脳内の神経伝達物質に影響を与え、痛みを感じやすくさせているとのことでした。治療として、漢方薬と少量の抗不安薬、そして保湿剤が処方されました。また、夢中になれる趣味を持ったり、軽い運動をしたりして、痛みに意識を集中させない時間を増やす「認知行動療法」のようなアドバイスも受けました。治療を始めて数ヶ月、痛みは完全には消えていませんが、以前のように生活を支配されるほどの苦痛ではなくなりました。「今日はちょっとピリピリするな、疲れているのかな」と、自分の体調を知るバロメーターとして付き合えるようになったのです。もし今、私と同じように誰にも分かってもらえない舌の痛みに悩んでいる同世代の方がいたら、伝えたいことがあります。あなたは一人ではありませんし、それは決して「気のせい」ではありません。ホルモンの波に揺れる体が発しているサインです。専門の先生(口腔外科や更年期外来、心療歯科など)に相談し、適切なケアを受ければ、必ず楽になる日は来ます。焦らず、自分の心と体をいたわってあげてください。