食事中や会話に夢中になっている時、ガリッという鈍い音と共に舌を噛んでしまった経験は、誰にでもあるでしょう。その瞬間の激痛もさることながら、さらに厄介なのが、その傷が原因で後から発生する「痛いできもの」、つまり口内炎です。噛んでできた物理的な傷が、なぜ二次的な炎症を引き起こしてしまうのでしょうか。それは、私たちの口の中に常に存在している無数の細菌が原因です。健康な舌の粘膜は、強力なバリア機能によって細菌の侵入を防いでいます。しかし、舌を噛むことで粘膜に傷がつくと、そのバリアが破壊され、細菌にとっては格好の侵入口ができてしまいます。傷口に食べかすなどが付着し、そこを温床として細菌が繁殖すると、炎症が引き起こされ、痛みを伴う口内炎へと発展してしまうのです。特に、疲労やストレスで体の免疫力が低下している時は、この細菌との戦いに負けやすく、できものができやすい状態と言えます。この厄介な連鎖を断ち切るためには、舌を噛んでしまった直後のケアが非常に重要です。まず、出血がある場合は清潔なガーゼなどで圧迫して止血します。その後は、口の中をとにかく清潔に保つことを徹底しましょう。刺激の少ないうがい薬や食塩水で、優しく、しかしこまめにうがいを行い、傷口を衛生的に保ちます。また、治るまでは香辛料や熱いものなど、刺激の強い食事は避け、傷口を安静に保つことも大切です。もし、歯並びや合わない被せ物が原因で頻繁に同じ場所を噛んでしまう場合は、根本的な原因を取り除くために、一度歯科医院で相談することをお勧めします。