高額な費用と時間をかけて入れた前歯の差し歯。できることなら、一日でも長く快適に使い続けたいものです。では、差し歯の寿命は一体どのくらいなのでしょうか。そして、その寿命を延ばすためには、どのようなケアが必要なのでしょうか。一般的に、差し歯の寿命は、使用する材質や患者さんのお口の状態によって大きく異なりますが、平均的な目安として、保険適用のCAD/CAM冠で5年から7年、自費診療のセラミック系のもので10年から15年以上と言われています。しかし、これはあくまで平均値であり、日々のケア次第でこれより短くもなれば、長くもなります。差し歯の寿命を縮めてしまう最大の原因は、差し歯そのものの劣化よりも、それを支えている「土台の歯」に問題が起きることです。特に多いのが、差し歯と歯茎の境目から細菌が侵入し、内部で虫歯が再発してしまうケースです。また、歯周病が進行して歯茎が下がり、差し歯の根元が露出してしまったり、歯を支える骨が弱ってしまったりすることも、寿命を縮める大きな要因となります。さらに、就寝中の歯ぎしりや食いしばりの癖は、差し歯に過度な負担をかけ、破損や脱離の原因となるため注意が必要です。大切な差し歯を長持ちさせるための秘訣は、二つあります。一つは「徹底したセルフケア」です。差し歯と歯茎の境目は、汚れが最も溜まりやすい場所です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを必ず併用し、境目のプラークを丁寧に除去する習慣をつけましょう。そしてもう一つが「プロによる定期メンテナンス」です。三ヶ月から半年に一度は歯科医院で検診を受け、自分では落としきれない汚れのクリーニングや、噛み合わせのチェック、差し歯の状態の確認をしてもらうことが不可欠です。この二つの習慣が、あなたの差し歯の寿命を大きく延ばしてくれるはずです。