医療
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その痛みは喉の炎症かもしれません
舌の付け根が痛いと感じる時、私たちはつい舌そのものに原因があると考えがちです。しかし、実際には、その痛みの発生源は舌ではなく、すぐ隣にある「喉」であるケースが非常に多く見られます。解剖学的に、舌の付け根(舌根部)は、喉の入り口である咽頭と密接に繋がっています。そのため、喉に起きた炎症の痛みを、脳が「舌の付け根の痛み」として錯覚してしまうことがあるのです。これを「関連痛」と呼びます。喉の炎症として最も一般的なのが「急性咽頭炎」や「急性扁桃炎」です。これらは、風邪のウイルスや細菌が喉の粘膜や扁桃に感染することで起こります。主な症状は、喉の痛み、発熱、倦怠感、そして食べ物を飲み込む時の痛み(嚥下痛)です。この嚥下痛が、特に舌の付け根の痛みとして強く感じられることが特徴です。風邪の症状と共に舌の付け根が痛みだした場合は、まずこの喉の炎症を疑うべきでしょう。また、慢性的に扁桃に炎症がくすぶる「慢性扁桃炎」の場合も、普段は軽い違和感程度でも、疲れたり、体調を崩したりすると、舌の付け根に鈍い痛みが現れることがあります。さらに注意が必要なのが、扁桃炎が悪化して扁桃の周りに膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍」です。この場合は、片側の喉と舌の付け根に激しい痛みが起こり、口が開きにくくなったり、食事が全く摂れなくなったりします。これは緊急の処置が必要な状態です。このように、舌の付け根の痛みは、喉が発している重要なサインであることが少なくありません。もし痛みが続くようであれば、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診し、喉の状態をしっかりと診てもらうことが大切です。