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歯茎が赤い!腫れている!歯周病の危険信号
健康な歯茎の理想的な色がピンクであるのに対し、最も注意すべき色の変化が「赤み」です。歯茎が、以前よりも赤っぽくなっている、あるいは、鮮やかな赤色や、どす黒い赤紫色になっている。これは、歯茎が炎症を起こしていることを示す、最も典型的で分かりやすいサインであり、その多くは「歯周病」の始まり、あるいは進行を示唆しています。なぜ、歯茎は炎症を起こすと赤くなるのでしょうか。そのメカニズムは、皮膚が虫に刺された時に赤く腫れるのと似ています。歯磨きが不十分で、歯と歯茎の境目に歯垢(プラーク)が溜まると、その中に潜む歯周病菌が毒素を出し始めます。すると、体は、この細菌や毒素を撃退するために、防御反応として、患部に血液をたくさん送り込もうとします。この時、毛細血管が拡張し、血流が増加するため、歯茎が赤く見えるのです。また、炎症によって血管の壁がもろくなり、血液の成分が漏れ出すことで、歯茎がブヨブヨと腫れ上がります。これが、歯周病の初期段階である「歯肉炎」の状態です。この段階では、まだ歯を支える骨(歯槽骨)へのダメージはなく、丁寧な歯磨きと、歯科医院でのクリーニングによって、健康なピンク色の歯茎に戻ることが可能です。しかし、この歯肉炎のサインを放置し、歯垢が歯石に変わって、さらに歯周病菌の温床となると、炎症は歯茎の奥深くへと進行していきます。これが「歯周炎」です。歯周炎になると、歯茎の色は、うっ血したような暗い赤紫色に変化し、歯磨きの際に簡単に出血したり、膿が出たりするようになります。そして、水面下では、歯を支えている大切な骨が、炎症によって少しずつ溶かされ始めているのです。歯茎の赤みは、「ここに細菌がいますよ!」「助けて!」という、歯茎からの悲鳴です。このサインを見逃さず、できるだけ早い段階で歯科医院を受診し、適切な治療とクリーニングを受けること。それが、将来、歯を失うという最悪の事態を避けるための、最も重要な行動なのです。